2021/11/26 08:07

メリノウールのキャップが新しくなります。

↑ Flipper Cap Merinowool 🆕


今回はそのお話しです。

ちなみにvelo spicaでは2018AWからメリノウールの生地を使ったキャップを展開しています。
以前 F.U.B Cap Merinowool と名付けられたこのキャップは、生地の特性を活かしオールシーズン対応&どんな格好にも合わせやすい、まさにオールラウンダーモデルという位置付けでした。そしてシーズン毎に新色を加え作り続けてきた隠れた人気モデルです。
(新しいモデルと混同を避ける為、以降旧型を F.U.B Cap Merinowool(旧)、新型をFlipper Cap Merinowool🆕とします。)
メリノウールのキャップの多くがアウトドアメーカーの商品ですので、どうしてもデザインもアウトドアテイストに寄せたものが多くなります。そんな中、オーソドックスな基本形の6パネルは意外と他に無かった、というのもご好評頂いたポイントだったと思います。
(昨年まで展開していたF.U.B Cap Merinowool(旧)は、Danguree Blue(DB)の1色があと数点を残して全て完売致しました)

このモデルは一応人気商品ですので、定番として今年も作る事を考えましたが、改めてアップデート版をリリースする事にしました。
アップデート版にする理由としては、

1, これまでオールシーズン対応だったものからより秋冬、やや寒冷地用に寄せたモデルに変更。
velo spicaとして商品展開が増え、春夏物のバリュエーションも色々と選べるようになってきましたので、AWはより冬物色を強くして冬場のライドやハイクにも快適に使えるものを開発したいと考えました。

2, 2021のテーマ『DO THE RE:THINK』のテーマに沿って。
今年のSS-AW通して上記テーマで商品を企画しています。このテーマに沿って定番スタイルを更にブラッシュアップしました。SSでローンチしたFlipper Capのパターンがとても良く、これをメリノでも採用しました。


そんな訳で今回は生地・パターンを変更してます。

まず生地に関して。
補足としてこれまでのF.U.B Cap Merinowool(旧)で採用していた生地がどういうものだったかを復習しておくと、SUPER100's(羊毛繊維が非常に細い)という、主にスーツ服地として使われる高品質な生地を使っていました。洋服がお好きな方ならSUPER100'sという言葉に聞き覚えのあるかと思います。これはIWTO(国際羊毛繊維機構)が定めたウール繊維の細さを表す表記方法で、数値が高いほど羊毛繊維が細くなっていきます。細ければ細いほど繊維に空気を多く含み、結果軽くて暖かい。
一般的なウールは繊維の太さが2.5〜30ミクロンと言われています。SUPER100’sは18.5ミクロンですのでその細さが分かります。


余談ですが、
メリノウールの生地をどこで手配しているか、入手経路について同業者さんから聞かれることがたまにあります。
実際メリノウール、という名前で生地を手に入れようとすると案外見つからないのも事実で、結果ニュージーランドや海外から輸入するなど大掛かりな事になるとかならないとか...
最近のメリノウールの有り難がられ方をみると、高機能な化学繊維が溢れる現代に突如として現れた天然の万能機能素材、、、みたいな印象を受けますが、実際はそう言う訳ではなくスーツ服地としてメリノウールは大変古くから使われています。羅紗屋さん(スーツ生地屋)ではウールと言えば言わなくてもメリノ、当たり前過ぎてメリノウールとは謳っていない事の方が多いように思います。(2021年11月現在。今後はメリノウールを前面に出してくる生地メーカーさんも出てきそうな気がします)
なので、スーツの青◯から出てくるサラリーマンでも上下メリノウールのセットアップである可能性が高かったりしますw

閑話休題。





↑ これまでのF.U.B Cap Merinowool(旧) 肌触りが良く光沢のある平織。光にかざすと向こうがやや透ける程度の薄さの生地。目が詰まり過ぎていないので通気性も良い。

新型はこの旧モデルをベースに良かった点を継承しつつ、ややバルキーな秋冬らしい生地に変更されています。

ではここで、そもそも何でメリノウールという素材に注目し、帽子(ウェア類)の素材として使ったのかという点を今一度振り返ってみると、

1, 体温調整機能。汗冷えしにくい保温性。
2, 耐臭性。汗をかいても臭くなり難い。
3, 高い吸放湿性
4, 天然素材。肌に優しい。
5, ECO。再生可能。

以上の点です。(厳密に言えば、難燃性や紫外線吸収など色々な機能の備わった素材ですが、とりあえず他は一旦置いといて)
自転車やハイクなどでは特に1,2が魅力です。ですので、この2つの特性を活かした帽子作りをする必要があります。
それに付随して、あったら好ましいのが通気性と乾きやすさです。これらは生地の織り方や厚みで大きく変わります。

良いところばかりが取り上げられがちなメリノウール ですが必ずしもそうではなく、化繊の速乾性に慣れてしまうとどうしても汗の乾きが悪く感じてしまいます。実際に100%メリノウールの帽子は、フィールドテスト時の下山後もしばらく帽子が濡れたままという事も多々ありました。
メリノウールの良さの一つに汗冷えのしにくさが挙げられますが、この機能と生地の乾きやすさはなかなか両立が難しく、フィールドテストの結果を踏まえ、そのバランスをとるのに重要だったのが混紡率でした。

ウール  85%( メリノウール )    ナイロン 13%     ポリウレタン  2%   

F.U.B Cap Merinowool(旧)の混紡率です。
ナイロンが13%入っている事で、汗をかいた時の乾きがだいぶ改善。かつメリノの特性も損なわれる事なく発揮します。ポリウレタンは生地に伸縮性を与える為に入っています。
このバランスがオールシーズン使えて、大変ご好評頂いたポイントだったように思います。
ただ、冬場はというともう少し保温性があるものが好ましく、希望としては気持ちバルキーな生地(より熱伝導の低い空気の層をより含むので暖かい)の方が良いな、という思いもありました。
その点も踏まえた上で、Flipper Cap Merinowool🆕 の新しい生地を選んでいます。


そんな Flipper Cap Merinowool🆕 の混紡率は、

ウール  78%(メリノウール )    ナイロン 10%    アンゴラ 9%    カシミア 2%    ポリウレタン 1%

使用されているメリノウールはエクストラファインメリノ(18.5ミクロン、SUPER100's相当)。これにアンゴラ(14.5ミクロン)とカシミア(15〜19ミクロン)を混紡する事で、よりソフトかつバルキーに。
F.U.B Cap Merinowool(旧)と比べ、トータルでの動物繊維の割合が増え暖かさも増しています。
そして前回に引き続きナイロンを混紡する事で汗の乾き改善を目指しています。暖かさとのバランスをとる為に、F.U.B Cap Merinowool(旧)よりも若干ナイロンの混紡率を落としていますが、ツバ裏をT/C(ポリエステル 65% / コットン 35%)の生地に切り替える事で、大量発汗時の汗の逃げ道を作っています。ツバ裏を速乾生地に切り替えるのは、 velo spica のキャップで多く使われる汗対策です。

企画当初、ツバ裏はテックな吸汗・速乾生地にする案もあったのですが、言い方は悪いですが敢えてディッキー◯などのワークウェアに使われる、ごくごくありふれたT/Cツイル生地にしました。
それはボディに上質なメリノ生地を使いつつも、ラグジュアリーに寄せるのではなくストリートテイストを加えたかったからです。
どうでしょう? ストリートなベースボールキャップの雰囲気も最高な、(パッと見は分かりませんが) 機能性も十分に備わった完璧なキャップになりました。


↑ あまり目立ちませんが、かいた汗でフロントパネルに少し汗じみが出始めています。


↑ この時点でツバ裏にたくさん汗がすわれていきます。付け根部分が濡れています。T/C生地なので乾きが早い。


↑ FLEX VISOR はツバを畳んで持ち運ぶ事が可能です。非常に軽量。



↑ もちろんフリップアップも。

使って頂いた感想などお気軽にお寄せ下さい。
皆さま宜しくお願い致します。

※ 発売は11月27日 20時からです。

参考
ウールマークカンパニー https://www.woolmark.jp/fibre/