2022/03/30 10:40

以前SNSでも紹介したことがありますが、今回はオリジナルのプリント生地についてのお話しです。



↑ UGM × TIMS × velo spica 

イベントオリジナル総柄生地として製作されたこの生地。キャラクター/ロゴのデザインはオソン・ジュンさん。
プリント生地はこれまでも沢山作ってきましたが、この生地はこれまでとは一味違います。では一体何が違うのかっていうのが今回の話しのテーマです。ちょっとマニアックテーマになりますが、良かったら最後までお付き合い下さい。

完成した生地を初めて見たときかなりテンション上がりました。生地の出来栄えも十分満足行くもので、この感動を誰かに伝えたくてストーリーにアップしちゃったり、いい歳してはしゃいでました。

一人はしゃいでいたのには訳があります。勿論オソンさんデザインが最高なのは言うまでもありませんが、実はそれ以外にも理由があります。
それはこの生地がナイロン100%で昇華転写プリントで作られた総柄生地だからです。

パタゴニアのバギーズもそうですが、90sのスポーツウェアなどではややコットンライクな乾いた質感のナイロン100%生地に、ちょっと変わった総柄デザインをプリントしたウェアや小物類が良く見受けられます。肌触りも良く、乾きやす生地なので僕はとても好きです。velo spica でSUPPLEX®︎やタスランナイロンなどを採用することが多いものそれが理由で、あの風合いやテクスチャーの感じがどうしても出したくて、ずっと総柄プリントのナイロン100%生地を作りたいと考えてました。
しかし実は国内でナイロン100%生地にこの総柄転写プリントが出来る工場や印刷屋さんが全然なくて(出来ない理由は後述)、ずっと企画の段階で止まっておりました。
が、何と!遂に!やってもらえるところが見つかりました。

ちなみにナイロンのプリント生地自体はウェアになった状態で流通しているのを見ますので、製造すること自体は可能だと思われるのですが、何せどこに依頼しても梨の礫といった状態で。大きいブランドさんは自社の工場でやってるのかも知れません。しかし僕ら小さいメーカーは、こちらから印刷屋さんに指定の生地を持ち込み、プリントして貰うのはただでさえ断られるケースが多いです。

と、ここまでお話ししても繊維業と縁ない方からすると何のこっちゃ、といった感じだと思います。
ここで簡単に生地に絵柄を印刷する方法について説明すると、大まかに2種類の印刷方法があります。

1, ダイレクトインクジェットプリント
生地に直接インクを吹き付ける印刷方法。顔料インクを生地の表面に載せる為、洗濯を繰り返すと色褪せ易い。コットンなど天然生地に使われることが多いですが、捺染と同じ原理ですので、やろうと思えば色々な素材に印刷できます。発色、耐久性は落ちるがナイロンにプリントするケースも。

2, 昇華転写プリント
熱をかけて、生地にデザインを転写させる印刷方法。昇華インクを一度、転写紙という専用のシートにプリントし、今度はそれを生地に密着させ、熱をかけてデザインを生地に転写します。
熱でインクを気化させて生地の内部にインク染み込ませる為、自然で洗濯堅牢度の高い生地になります。デザイン再現性も高い。主にポリエステル生地に印刷します。

それぞれ印刷したい生地の素材によって選べる印刷方法が変わってきます。
それ以外にもTシャツやナイロン製のジャケットなどにロゴをプリントする方法で、比較的面積の小さな場合は、熱で接着する転写シールなどがあります。これはインクを気化させて染み込ませる昇華転写とは全く別物です。

今回作った生地はというと、、、2,の昇華転写プリントにジャンル分けされるプリント方法です。(厳密にいうともう少し特殊な方法)
ですので、色やデザインの精細さ、加えて洗濯堅牢度の高さ、言うことなしの完璧です。
ですが、先ほどの印刷方法の説明でもありましたが、昇華転写は主にポリエステル生地に用いられる方法です。と言うよりポリエステル生地の熱での収縮を利用した印刷方法です。熱をかけることでポリエステルのポリマー(分子の連なったもの)に一時的に隙間ができ、そこに染料インクが気化したものが入り込み繊維の中に拡散される事により染めます。

では何故ナイロンには向かないのか?
なぜかと言うと通常の昇華転写は180℃の熱を加えてプリントする為、ナイロン生地は溶けてしまいプリント出来ません。このことから、ほとんどの印刷屋さんはナイロン100%の昇華転写は出来ない、というのがあくまで一般論です。
それを生地を溶かさない方法でプリント出来る印刷屋さんを見つけられたのが、今回の生地完成への第一歩でした。
詳しい印刷方法は、機会があればご紹介しますが、今回はここまでにさせて頂きます。

今年はオリジナルの生地の企画もやっと進められそうで嬉しい限りです。
乞うご期待。